漂白の旅

僕が家具のメンテナンスや仕上げに使う、ウッドワックスはイギリス製のものを使用しています。

伝統を重んじるイギリスでは、古いものを大切にすることが文化として根付いているといいます。

古くから家具にはオーク材やウォルナットが用いられ、メンテナンスされながら長く使われてきた家具が今でも大切にされています。

イギリス家具の歴史は、そのままメンテナンスの歴史だと言えます。

 

イギリス出身の先生と、日本人の奥さんの運営する英会話スクール、メリーイングランドさんはカフェを併設した英会話教室です。

16年前のオープン当初、スクールの利用者や、送り迎えの保護者様のためにと当初作られたカフェが評判になり、実際のカフェとして営業されることになりました。

店内は、イギリスから直接運ばれたアンティークな設えと家具で満たされ、田舎にいながらイギリスを感じさせ落ち着ける空間です。

そんなメリーイングランドさんの2号店が11月25日にオープンしました。

 

cafe クヌルプ。

ヘルマン・ヘッセの同名小説から名付けられた店名には、劇中、自然と人生の美しさを漂白の旅から学んだ主人公クヌルプにちなんで、柔軟で本当の意味で美しいものを提供する場でありたいというメリーイングランドさんの想いが込められています。
その入り口には、象徴的な2つの扉が取り付けられました。

高さ3メートルほどの古いエジプトのドアと、イギリスのアンティークなガラス戸です。

この象徴的なエントランスに『何かしらのサインを』と、ご依頼をいただきました。

ガラス戸を開けるとまず正面に大きな本棚が目に飛び込んでくるという入り口。

何をしても絵になるエントランスにどのようなサインを設ければ効果的か、長く悩みましたが、”本”というキーワードが浮かんでから一気にイメージができました。

1号店の前を何度か通られた方は、ご覧になったことがあると思いますが、窓際で本をめくりながらゆったりとした時間を過ごしていらっしゃるお客様の姿が印象的でしたし、メリーイングランドさんご夫婦の大切にされてきた家具や文化そのものが、物語的だと感じていました。

ロゴマークではなく、あくまで装飾の一部としてフレームの四隅にさりげなく配するデザイン。

言われてみれば本に見える程であり、それでいてフレームとして品のあるもの。

納得のいく形ができ、ガラスに光沢のあるゴールドで、本のフレームとロゴとロゴマークをカッティングシートで装飾しました。

 

同じく駐車場看板にも本の装飾フレームを共通して使用したものを採用していただきました。

プレート部分は、古いアルミプレートに建物のタイルの色に合わせた、ムラのあるこだわりのインディゴブルーに。

 

これまでのメリーイングランドさんにはなかった、新しい空間です。

この空間でさらなる新しい試みも計画中だとか。

物語の扉、孤高の放浪家クヌルプからインスピレーションされた美意識への入り口を、ぜひそっと開けてみてください。

心の中の、新しい扉も開いたら楽しいですね。

 

・看板製作(アイアンポールサイン)
古材のアルミプレートに透過性藍色塗装
文字レタリング

 

・看板製作(ガラス戸)
装飾デザイン
メタルゴールドのカッティングシート

 

・オリジナル照明
古材のアルミ鍛金シェード
真鍮スイッチングソケット(E26球)